環境学研究所、持続可能性、持続可能な発展、サステイナビリティーの研究・教育、藤平和俊

ESD・環境教育研究

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「制御」の科学を応用して、持続可能な発展のための教育の研究を進めています。教育の分野では、「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development, ESD)」という表現が多く用いられています。なお、環境問題の解決を意図する環境教育は、ESDの中でも重要な位置を占めています。

ESDの役割

環境問題および社会問題を解決して「持続可能な発展(開発)」を実現するためには、人間活動を持続可能に制御する必要があります。さらに、人間活動を制御するには「行動変化」が必要であり、人間には行動変化を可能にする能力と意欲が求められます。制御の科学を応用するアプローチでは、この持続可能な発展につながる行動変化を可能にする能力と意欲を高めるのがESDの役割だと捉えます。

ESDの方法

制御の科学を応用してESDを進めるとき、まず、教育課題に沿った制御系を示します。その上で、教育プログラムの中には、持続可能な発展につながる行動変化を可能にする能力・意欲を高める要素をできる限り組み込んでいきます。以下に、「能力を高める要素」と「意欲を高める要素」を示します。

1、能力を高める要素

(1)制御変数と目標値を理解
制御目標は、制御変数を目標値に一致させることですから、制御変数と目標値の両方を理解することが必要になります。

(2)制御方策の計画能力向上
制御方策、すなわち制御目標を達成できるような行動変化を計画することが求められます。よって、制御方策の計画能力向上が必要になります。

(3)制御方策の実行能力向上
さらに、計画した制御方策を現実の世界で実行するために、制御方策の実行能力向上も求められます。

2、意欲を高める要素

(1)制御変数と問題との関係を認識
制御変数と問題との関係を認識するとは、学習者自身が対処すべき問題に関与していることを実感することです。これは、学習者の責任感の醸成につながります。

(2)問題と外乱を認識
「問題」の認識は、対処すべき環境・社会問題について認識することです。また、「外乱」の認識とは、問題が制御対象に及ぼす悪影響について認識することです。

(3)制御による直接的利益を認識
制御にともなう学習者の直接的な利益を認識することです。ここで利益とは、金銭的利得だけでなく、健康増進をはじめ学習者の生活の質を高める諸要素が含まれます。

関連論文

An Educational Methodology for Sustainable Development

Fujihira, K. & Osuka, K., 2009, ICCAS-SICE 2009 Final Program and Papers, ISBN 978-4-907764-33-3, Fukuoka, Japan, August 18-21, 2009

制御理論を応用した持続可能な開発のための教育の方法論とその有効性の確認

藤平和俊・大須賀公一・吉岡崇仁・林 直樹, 2008, 環境教育, 18巻1号, pp. 17-28.

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